掲載日:2024年5月2日
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令和元年度 印刷物にみる戦時下の世相と銃後の生活
昭和12年(1937年)7月7日、北京郊外の盧溝橋付近で発生した日中両軍による衝突事件が発端となって日中戦争へと発展しました。そして、昭和16年(1941年)には日本軍によるハワイ真珠湾攻撃によって太平洋戦争が始まり、昭和20年(1945年)の敗戦までこの戦争が続きました。
こうした戦争の拡大に伴って、長期戦を支えるための体制や国民生活の全面にわたる管理・統制が強化されていきました。生活に身近な伝達媒体(新聞・出版物・放送・映画など)の表現や内容は、社会情勢・戦局の状況と呼応するように大きく変化しました。
特に、昭和15年(1940年)12月6日の情報局設立以降は、国策遂行に関する情報収集、広報宣伝、出版統制、報道・演劇への指導や取り締まりなどがいっそう強化されていきました。
学帽と戦闘帽の営業ポスター「商工省推奨 報国学帽 戦闘帽」 所蔵:中央区
東京市連合防護団ポスター「護れ帝都! 備へよ空に!」 所蔵:中央区
戦時中のさまざまな印刷物(本・雑誌・教育紙芝居)
昭和12年(1937年)に防空法が施行されてからは、さまざまな印刷物を通して銃後の防空対策や国家的な情報が発信・宣伝されました。こうした印刷物は、戦時体制下における国民の世論・思想形成を担う重要なメディアとして多様なものが発行されました。
特に、広告・情報媒体として発行されていたポスターや雑誌類は、消費に関する統制が進められたために商業的な広告が少なくなり、時局に関連した情報や宣伝の掲載が多くなりました。また、教育に関する統制も進み、戦意高揚を図る国策紙芝居や銃後の生活を掲載した雑誌などが多く発行されました。
雑誌『家庭防空』 所蔵:中央区
内務省推薦書籍『防空絵とき』 所蔵:中央区
国策グラフ雑誌『写真週報』 所蔵:中央区
絵本『前線ト銃後』 所蔵:中央区
少年雑誌『週刊少国民』 所蔵:中央区
紙芝居トーキー『防空は防火なり』 所蔵:中央区
戦時下の伝達事項を知らせた印刷物(通知・回報・情報地図)
昭和15年(1940年)の内務省訓令に基づき、町内会などの下には「隣組」が組織されました。隣近所の数軒単位で組織された隣組は、戦時下の相互扶助的な生活の中で防空・防火活動、資源の供出、配給物資の分配、政府の訓令・通達の伝達などの役割を担いました。
隣組内では、東京市からの回報、統制品の配給、金属の供出、戦時下における心構えなどが刷られた印刷紙(活版刷りや手書きのガリ版刷りの紙)が回覧板によって伝達されました。戦争が拡大して本土への空襲が激しくなると、隣組の組員に伝達される情報は生活に緊張感や窮屈さを感じる内容のものが多くなりました。
通知「市民防空訓練」 所蔵:中央区立郷土資料館
回報「灯火管制の訓練」 所蔵:中央区
回報「空襲に対する我等の心構へ」 所蔵:中央区
情報地図「東部軍情報 解説要図」 所蔵:中央区
空襲前に散布されたビラ
日本への空襲が激しくなる太平洋戦争の末期には、本土上空からアメリカ軍機が戦意喪失を目的とする宣伝ビラ(伝単)を大量にまいたといわれています。この宣伝ビラには、空襲の恐怖や降伏を勧告する内容の日本語が付され、人の目を引くようなレイアウトや独特の字体を用いた多種多様なものが多数作られました。
制作にあたっては、英語で起草した原文を日本語に翻訳し、高速印刷機にかけて大量に印刷しました。戦時下の日本には、終戦までの間に上空から数百万枚がまかれたといわれ、拾った場合には警察へ届けなければならないとされていました。
伝単「無条件降伏の意義」 所蔵:中央区
伝単「右腕と左腕 戦は終りに近い」 所蔵:中央区
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