彩色(さいしき)設計図集

掲載日:2023年7月20日

ページID:13805

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図集画像

種別

国登録有形文化財美術工芸品(歴史資料)

所在地

京橋二丁目16番1号 清水建設株式会社

広報紙コラム「区内の文化財」より(令和5年2月21日号)

平成8年(1996)に創設された国の文化財登録制度によって、「文化財登録原簿」に登録された有形文化財(建造物)が全国各地に生まれました。その後、平成16年(2004)の文化財保護法改正では、建造物以外の有形文化財も登録の対象となり、令和3年(2021)には同法の改正によって無形文化財の登録制度も新設されています。令和5年(2023)1月現在の都内の登録文化財は、登録有形文化財429件(建造物427件・美術工芸品2件)、登録記念物4件(遺跡1件・名勝地3件〈遺跡と名勝地の重複含む〉)、登録無形文化財3件(「書道」「伝統的酒造り」「菓銘(かめい)を持つ生菓子(煉切〈ねりきり〉・こなし)」)を数えます。このうち、中央区内では9件の建造物と1件の美術工芸品が登録されています。
なお、登録有形文化財の美術工芸品には、七つの種別(「絵画」「彫刻」「工芸品」「書跡・典籍」「古文書」「考古資料」「歴史資料」)があり、都内には現時点で2件の「歴史資料」があります。一つは、清水建設株式会社所蔵の「彩色設計図集」632点(平成23年〈2011〉6月登録)で、もう一つは、学校法人玉川学園所蔵の「近代教科書関係資料(玉川大学収集)」1万2728点(令和2年〈2020〉9月登録)です。
「彩色設計図集」のような建築図面は、重要文化財に指定された建造物の関係資料として「附(つけたり)指定」されるケース(区内では重要文化財・三越日本橋本店の図面類)があります。しかし、当該図集に収録されている建物の多くは現存していないものが多く、設計変更などに伴って図面と実際の仕様が異なるものがあり、さらには計画のみで実際に建設されなかった建物なども一部含まれています。このため、日本の近代建築史において貴重な資料であり、学術的な価値の高さも評価され、新たな分類で文化財登録されました。
清水建設株式会社所蔵「彩色設計図集」の原装(げんそう)は、アルバム仕立ての装幀〈そうてい〉(表紙と裏表紙は深緑色のクロス装・傷みやすい隅は角革(かどかわ)・綴じ側の革背表紙にある表題は金箔押し)で8分冊あり、目録とともに竣工(しゅんこう)番号・工事名(建築作品名)などが付された図面が建築類別・用途別に綴じられていました。なお、現在は原装時点での分類や配列にしたがって図面1点ごとに保存が図られています。
ワットマン紙(麻を原料とする製図用紙)に描かれた図面類は、同社(前身の清水満之助店・合資会社清水組)が明治38年(1905)から大正12年(1923)にかけて手掛けた日本各地の建造物(住宅・銀行・会社・商店・事務所・学校・図書館・病院・公共会館・娯楽場・旅館・料理店・工場・倉庫など)のものです。建物の平面・立面・断面などを鋭い穂先の面相筆(めんそうふで)や烏口(からすぐち)で墨入れし、水彩絵具で各部材(建物の室内・家具・電灯図面もあり)の微妙な色調まで表現するなど、非常に手の込んだ彩色設計図面となっています。
区内(旧日本橋区・旧京橋区)では、東京銀行(日本橋区田所町〈たどころちょう〉)・東海銀行(日本橋区呉服町〈ごふくちょう〉)・森村銀行(日本橋区通〈とおり〉)・大倉書店(日本橋区通)・石川島造船所事務所(京橋区佃町)・渋沢兜町貸事務所(日本橋区兜町)・日本橋倶楽部(日本橋区浜町)・楓川(もみじがわ)女子小学校(日本橋区坂本町)・日本橋高等小学校(日本橋区蛎殻町)などをはじめ、60件を超える建物の設計図面が残されています。当該図集は、現在では確認することができない建造物の構造のみならず、色彩までも精緻に描きこまれた希少な歴史資料といえます。
中央区教育委員会
学芸員 増山一成

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ファクス:03-3551-2712

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