関東大震災避難記念碑(かんとうだいしんさいひなんきねんひ)

掲載日:2023年7月19日

ページID:14074

ここから本文です。

関東大震災避難記念碑の画像

関東大震災避難記念碑

種別

区民有形文化財 歴史資料

所在地

日本橋浜町二丁目57番先

員数

1基

年代

昭和8年(補修 昭和39年)

登録年月日

令和5年4月1日

登録基準

〔6〕

 イ、歴史上の事象に関する遺品で学術的価値のあるもの

 ハ、区の歴史上重要と認められるもの

広報紙コラム「区内の文化財」より(令和5年4月21日号)

大正12年(1923)9月1日の午前11時58分に発生した首都直下型地震「関東大震災」は、東京府(東京都の前身)を中心とする南関東一円(神奈川県・千葉県・埼玉県・茨城県・山梨県・静岡県)に甚大な被害をもたらしました。令和5年(2023)の今年は、この大地震の発生から100年の節目に当たり、内閣府をはじめとする国や地方公共団体・民間団体などにおいて、関東大震災100年をテーマとするさまざまな行事やイベントが予定されています。

歴史をたどると、震災直後から昭和5年(1930)まで約6年にわたる各種復興事業が実施され、東京の下町地域を中心に都市基盤とインフラ整備が進められた事実があります。
なお、その後の戦災と戦後復興を挟むものの、この時の震災復興計画・復興事業が現在の中央区発展の礎を築いたともいえます。

時代が移り変わり、街並みも大きく変化してきましたが、区内には100年前の事象を伝える貴重ないしぶみ(石碑)が点在しています。

隅田川に架かる新大橋の西詰に立つ「関東大震災避難記念碑」もその一つです。この石造物は、関東大震災後に発生した大火災から逃れるため、「新大橋(明治45年〈1912〉竣工(しゅんこう)の鋼製トラス橋)の橋上へと避難してきた多くの人の命を救った」という伝承を後世に伝える記念碑として建立されたものです。

仙台石を加工した大規模な石碑(高さ〈自然石張りの台座を含む〉約5.57メートル・幅約2.11メートル・厚さ約36センチメートル)には、表面に旧久留米藩有馬家出身の政治家・有馬頼寧(ありまよりやす)(1884~1957)による「避難記念」の篆額(てんがく)(石碑上部に篆書で刻まれた題字)と石碑の建立趣旨文(旧久留米藩出身の水天宮社掌(しゃしょう)〈神職〉・樋口悌次郎による文)が陰刻されています。また、裏面には石碑建立の発起人6名(〈日本橋区〉法木(のりき)徳兵衛・加藤肆郎(しろう)・庄野又兵衛・星野錫(しゃく)、〈向島区〉(有馬秀雄)が確認できるとともに、300名以上の寄付者(個人・商店・組合ほか)・寄付金・住所などが隙間なく陰刻されています。

表面の碑文を読み込むと、燃えに燃え来る紅蓮(ぐれん)の炎が迫りくる中で、「大衆は橋上に御遷座(ごせんざ)あらせられたる水天宮及(および)小網稲荷神社玄冶店(げんやだな)橘神社の御霊代(みたましろ)を伏(ふ)し拝(おが)み神助(しんじょ)を熱祷(ねっとう)した」と刻まれており、大正大震火災(だいしんかさい)とも称される凄(すさ)まじい大火災に直面する避難者の様子が真に迫ってくる文面となっています。また、隅田川に架橋されていた橋のうちで新大橋のみが災害を免れたこと、日本橋区の法木徳兵衛が中心となり「新大橋避難記念会」を組織して毎年9月1日に祭典を催したこと、そして満10回(震災発生から10年)を迎えた昭和8年(1933)9月2日に当該碑を建立して永久記念としたことなどが連綿と陰刻されています。さらに、裏面には昭和39年(1964)1月に石碑の補修が行われたことや昭和46年(1971)9月1日の寄付者名・寄付金なども陰刻されており、戦後に補修・追刻が行われた事実(痕跡)を知ることができます。

なお、現在の石碑は、建立当初の原位置とはやや異なる地点に位置することや、碑身(ひしん)上部の形状が建立当初とは異なる点があることなどから、昭和39年以降に再建したものと推定されています。

当該石碑は、関東大震災に直面した先人たちの状況や避難の様子をつぶさに刻み込んだ歴史資料であり、時代を超えて後世に伝え続ける希少な自然災害の伝承碑となっています。

中央区教育委員会
学芸員 増山一成

お問い合わせ先

教育委員会事務局図書文化財課郷土資料館

〒104-0041 新富一丁目13番14号

電話:03-3551-2167

ファクス:03-3551-2712

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

同じカテゴリから探す

中央区を、知る about Chuo City > 中央区内の文化財 > 区民有形文化財 > 歴史資料 > 関東大震災避難記念碑(かんとうだいしんさいひなんきねんひ)