掲載日:2025年1月21日
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中学生の「税についての作文」
次代を担う中学生が、私たちの身近な生活環境と税との関わりについて関心を持ち、税への理解を深められるよう、全国納税貯蓄組合連合会および国税庁が主催する中学生の「税についての作文」の募集が毎年行われています。令和6年度も本区の多くの中学生が応募しました。
その中から、東京納税貯蓄組合総連合会会長賞を受賞した晴海中学校の白石玲伊さん、バトスレンエムジンさん、日本橋中学校の藤原聖沙さん、開智日本橋学園中学校の田村咲空さんの作品をご紹介します。
「税金が導く復興」 中央区立晴海中学校 白石 玲伊
この夏休みにチームカーボンゼロというプロジェクトで、福島県大熊町に行った。ここは、東日本大震災によって大きな被害を受けた町である。福島第一原子力発電所が位置し、放射能による被害で帰還困難区域となっていた。現在は、避難指示が解除された地域もあるが、二〇二四年二月時点でまだ、町の半分ほどが帰還困難区域のままである。
しかし、実際に大熊町に行き町の様子を伺うと、今まさに復興が進んでいるのが目に見えた。緑は豊富で、町役場や交流施設、いちご農園など新しい施設が多く建設されていた。
また大熊町は、二〇二〇年にゼロカーボンシティ宣言をしている。このゼロカーボンとは、温室効果ガスの排出量と森林の吸収量が足し引きゼロになることである。私が住んでいる東京都中央区と、カーボンニュートラルへの連帯協定締結をしている。このように、環境問題の観点でも世界的に見て進んだ取り組みをしている町であった。特に驚いたのは、どこを見渡しても太陽光パネルが設置されていたことである。
私は、この大熊町のゼロカーボンを達成しつつ復興していく姿を見て「どこから資金が入っているのだろうか」と気になった。そこで調べてみると、寄付金はもちろんのこと、復興特別税というものがあることを知った。この復興特別税とは、東日本大震災の復興のために作られた税金である。二〇一三年一月一日から、二〇三七年一二月三一日までの期間、通常の所得税にうわのせして徴収される特別税である。
これまで、消費税や所得税などはよく耳にしていたが、復興税という特別な税があることは一切知らなかった。父にもこの復興税の話をすると、「知らなかった」と言っていた。私の父のように、知らず知らずのうちに特別税を通して復興の力となっている社会人も多いのではないか。これが、復興税というものを認識して納税すると、知らずに納税した時とは違った、復興支援になると思う。
現在、大熊町だけでなく他の地域でも復興が進んでいる最中である。実際に行って気づいたが、町はまだすべてが元通りになったとは言えない。復興が進んでいる場所から少し外れると、壊れた家屋や何もない平地が広がっている。人口も震災前に比べると、大幅に減っていて、町は妙な静けさに包まれていた。これから、町が震災以前のように多くの人が住む場所になるためにも、復興税はとても大切な役割を果たしていくと思う。
このように、税金とは様々なものがあり、いろいろな形となって私たちの生活を支えてくれている。復興特別税のように、私たちが知らない税は多くあるのかもしれない。そこで私は将来、「どんな税で、何を豊かにする税」なのかを知った上で納税したいと思う。そして、納税することによって、自分の生活も、誰かの生活も豊かにしていきたい。
「消費税は意外と深い」 中央区立晴海中学校 バトスレン エムジン
先日、学校で税理士の方の話を聴く機会があった。税金は大人が納めるもので、子供の我々には馴染みが薄く、加えて、何となくネガティブな印象があった。小さい頃百円ショップで買物をすると、代金が百円ではなく、百八円になることを不思議に思っていた。母に理由を尋ねたところ、百円はお店に払っているが、八円は政府に払っており、政府がその八円を集めて、公共施設を作ってくれることを教わったのが、税金という概念を初めて知ったときだった。私にとって消費税は間違いなく、最も身近な税金だ。
モンゴル国籍を持っている私は去年の夏休みに一時帰国した際、買い物をしたら「消費税」ではなく、十五パーセントの「付加価値税」を払ったのを思い出した。税金が国によって変わるのは知っていたが、買い物をする際に払う税金の名前も異なるようだ。調べてみたら、ヨーロッパの多くの国で消費税は付加価値税と呼ばれており、基本的に似たような概念だった。ただ、一つ大きな違いがあった。モンゴルの祖母が領収書の写真を撮って、税務局のアプリに登録していた。日本では、消費税は一円も戻ってこないのに、モンゴルでは、領収書をアップロードするだけで二パーセントも戻ってくる還付制度があった。付加価値税に一部還付制度があるのは、発行された領収書を使って政府が把握できていない経済活動を認識し、それらに税金を課すためであることが今回調べて分かった。税金は社会インフラや公的サービスを作るための「財源」の役割があるが、国に届け出ていない経済活動を「見つける」役割もあったことが新たな発見だった。
また、消費税にもう一つ面白い点がある。祖父母が来日したとき、パスポートを見せて、消費税を払わずに買い物ができた。日本には「消費税免税制度」があり、非居住者は消費税が免除される。日本に居住している我々と同じように物品を購入しても、消費税を納める義務が非居住者にはない。つまり、税金の恩恵を受けない人はその国に税金を納める必要がないという考え方に基づいており、税金は合理的で、よくできていると感じた。言い換えれば、「恩恵を受ける人は税金を払う」となる。我々は公立学校に無償で通い、教科書を無償でもらえるのも、親世代が税金を納めているからである。その恩恵を受けた我々も将来税金を納めて、社会生活に貢献していくという仕組みを理解すると、税金に対するネガティブな印象もポジティブなものに変わった。
税金には消費税のほか、所得税、住民税、関税などいろいろあるが、どれも一つの国が存在するには欠かせないものであり、最も身近な消費税だけを見ても、とても深いものだと分かった。今後も税金に関する様々な知識を広げていきたいと考えた。
「森林保全と税金」 中央区立日本橋中学校 藤原 聖沙
二〇二四年度から、森林環境税という課税が始まることをニュースで知りました。この税は国民一人あたり年額千円が国税として徴収され、その税収の金額が国によって森林環境譲与税として、都道府県・市町村へ譲与される仕組みです。私が住んでいる東京都中央区には身近な「森」はありませんが、税が環境保全に活用されていると知り、どのように使われているか調べてみました。
中央区での森林譲与税の使い道として、令和四年度は、三つの取組がありました。
一つ目は「中央区の森」の推進です。区では、平成十八年から区の区域を越えた広域的な温暖化対策として、西へ六十キロ離れた東京都西多摩郡檜原村で「中央区の森」として森林保全活動を行っています。具体的な活動内容は、区が支援する形で主に間伐や植樹をして森林を整備しています。
二つ目は、檜原村と森林整備に関する協定を締結している地区に案内板等を設置し、訪れる人に区が森林保全活動を支援していることを伝えています。
三つ目は、檜原村における森林保全活動や動植物の観察などの自然体験を通し地球温暖化防止や生物多様性の保全等について、環境学習事業を実施し、学ぶ機会を提供しています。
私は、檜原村のことを調べているうちに、小学校四年生の時の社会科の授業を思い出しました。豊かな自然に囲まれているこの村では、小中学校で机や椅子のほか、教室の床、壁、天井等が木質化されていることを知りました。私は木のもつ香りや温かみが好きなので、それを日々感じながら学べる環境がとても羨ましいと思いました。また、私がよく通う区の図書館にも「中央区の森」の木材が活用されています。区域の中に森林が無い自治体の中には、この税の使用率が全くない所もありましたが、区では工夫して使われていることが分かりました。
今年は、十年に一度の猛暑です。その原因として温暖化の影響は大きく、防止するためには二酸化炭素を吸収して排出量を減らしてくれる森林の保護が必要不可欠です。また、森林には、土砂崩れや災害を防ぎ、多様な生物の生育を促進する機能もあり、私たちの生活を守ってくれています。
森林環境税は、このような重要な役割をもつ森林を守ることにつながる税金です。その使い道を多くの人に知ってもらうことで、身近な森林との関わりや、この税への理解がより深まると思いました。私もこれらのことを、出来るだけ多くの人に伝えていきたいと思います。
「母親が安心して働ける子育て支援」 開智日本橋学園中学校 田村 咲空
昨今、世界の多くの国が少子高齢化の問題を抱えている。中でも日本は少子高齢化率が二十九パーセントと世界で二番目に高い国である。日本では、諸外国より少子高齢化が進んでいる理由の一つとして、子育て支援があまり充実していないからだ、と言われている。子育て支援を充実させ、出生率を上げるために、保育料の無償化、高校の授業料無償化など、様々な政策が行われており、先日の東京都知事選でも子育て支援が争点の一つとなっていた。しかし、本当に日本の子育て支援は不十分なのだろうか。
私の母は、子育てをしながらキャリアを積みたいと思い、仕事を続けている。私は生後六ヶ月から保育園に通い始め、小学校では放課後を学童保育で過ごした。途中、父の仕事でアメリカに住んでいたことがあるが、その時も母は仕事をしていて、私は現地の公立校に通い、放課後は迎えが来るまで学童保育で待っていた。母は、保育園や学童保育のおかげで、子供を預けながら安心して仕事を続けることができた、といつも言っている。
日本とアメリカの保育料、学童保育料について比べてみると、日本の方が行政サポートが手厚いことがわかる。私が住んでいる千葉県浦安市の認可保育園の保育料は、所得に応じて、無料から月額五万二千円となっている。また、学童保育料は、月額五千円である。しかし、アメリカで通っていた公立の保育園では午後三時以降は延長保育の料金が加算され、フルタイムで働くと、所得と関係なく保育料は月額十五万円にもなった。私には妹がいるので、二人保育園へ通うと、保育料は二倍かかることになる。また、公立の学童保育は一日十ドルで、そこに週五回通うと、一ヶ月で二百ドル、つまり日本円に換算すると月額三万二千円払うことになる。アメリカでは、保育園や学童保育の料金が非常に高いため、高所得の家庭しか子供を預けることができず、母親がいくら働きたくても諦めなくてはならないことがある。
このように、私が住んでいたアメリカの地域と比べると、日本の子育て支援はものすごく手厚いと言える。日本では、それでも子育て支援が不足しているとずっと言われているが、私は支援が足りていないわけではないと思う。私の母は、子供を育てながら働き続けることができ、そして私が不自由のない生活を送ることができたのは、税金が保育園や学童保育に使われているからだ。将来、私も子育てしながら仕事をしたいと思っている。これからも子育てしやすい社会の実現に税金が使われることを期待する。
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