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中央区民文化財62 釜屋もぐさの振売箱(かまやもぐさのふりうりばこ)

更新日:2022年4月11日

釜屋もぐさの振売箱の画像
釜屋もぐさの振売箱

種別

区民有形民俗文化財

所在地

日本橋小網町6番1号 釜屋もぐさ

員数

1点

年代

江戸時代

登録年月日

平成11年4月1日

登録基準

〔1〕ロ、生産、生業に用いられるもの(製造用具、商業用具、工匠用具、作業場、店舗等)

広報紙コラム「区内の文化財」より(平成28年7月21日号掲載)

皮膚の深部に熱を浸透させて血液循環を高める「お灸」は、筋肉の凝りや張りの緩和、鎮痛や体質改善などに効果があるといわれています。身体のつぼとされる経穴を刺激する灸施術は手軽な健康法として試みられているようです。なお、懲らしめの意味で”灸を据える”という言葉遣いもあるように、古くからお灸による療治は身近な存在でした。
日本橋小網町にある株式会社釜屋もぐさは、創業(万治2年〈1659〉)以来の場所で点灸用の艾(お灸で燃焼させる綿状の材料〈蓬の葉の繊維部分を精製したもの〉)商品を提供する専門店です。同社では創業以来の屋号「釜屋」とトレードマークの「大鉄釜の商標」を用いており、社内にはかつて店頭に据え置いていた「大鉄釜」の一部(区民文化財〈鉄製大釜残欠〉)が掲げられています。
歴史をたどると、近江国(現在の滋賀県)から江戸に下った初代・釜屋(富士)治左衛門は、小網町三丁目(現在地)で荷積問屋を営みながら近江からの船便で江州伊吹山の艾を入荷し、江戸市中において売り始めたといいます。特に釜屋では、近江特産の良質な艾を撚って粒状に加工した「切艾」の販売を行ったため、簡便な灸療治ができると好評を博しました。なお、切艾は日常のみならず旅人の携帯品としても広く用いられた故に、複数の店が本家・元祖争いをするほどの名物にもなりました。江戸時代の風俗を考証した随筆『守貞謾稿』には「近江伊吹山ヲ艾ノ名産トス(中略)江戸ハ専ラ切艾ヲ用フ小網町ニ釜屋ト云艾店四五戸アリ名物トス(後略)」とあり、江戸名物の切艾店として小網町の釜屋が紹介されています。
釜屋治左衛門の艾店では、市中で切艾の振り売り(店以外で商品を売り歩く行商)を行っており、商品荷物を入れて背負う江戸時代後期(推定)の「振売箱」(高さ約43cm・幅約24cm・奥行約24cmの竹製背負い箱)が伝来しています。振売箱は網代編み(平たい同幅の竹ひごを交差しながら隙間なく編み込んだもの)の竹に漆和紙を張り込んであり、正面には「家印(注記:部首「ひとやね」の下に「中」と表記します) 小網三 釜治」と朱書きがあります。なお、家印は、釜屋治左衛門が近江国辻村の著名な鋳物師(田中七右衛門)の家系であることを示す標章と考えられています。この振売箱は、艾商の営業活動に用いられてきた希少な商業用具であるとともに、釜屋の暖簾と鋳物師の由緒を大切に守り伝えています。
中央区総括文化財調査指導員
増山一成

お問い合わせ

タイムドーム明石(中央区立郷土天文館)
電話:03-3546-5537

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