玉置文治郎ビル(たまおきぶんじろうびる)

掲載日:2023年7月20日

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玉置文治郎ビルの画像
玉置文治郎ビル

種別

国登録有形文化財(建造物)

所在地

東日本橋二丁目16番8号

広報紙コラム「区内の文化財」より(令和3年12月21日号)

愛知県犬山市郊外には、明治期の建造物などを移築・復元し、広く一般に展示公開している野外博物館「博物館明治村」があります。村内には、明治45年(1912年)に竣工(しゅんこう)した鉄製トラス橋「新大橋」の一部(旧日本橋区浜町側の約23m)が移築されており、国の有形文化財に登録されています。また、この近くには、大正12年(1923年)竣工の帝国ホテル旧本館(F・L・ライト設計)の中央玄関部分なども移築されています。内外部に用いられた化粧レンガのスクラッチタイル(レンガからタイル張りの過渡期に用いられた素焼きの建材で、櫛引き(くしびき)したような縞(しま)模様が特徴)や装飾性豊かな意匠が散見され、建物に独特の表情をもたらしています。
多様な色合いと細かい溝が特徴のスクラッチタイルは、関東大震災時に軽微な損傷で済んだ帝国ホテル旧本館建築に用いられていたこともあり、昭和初期の復興建築に数多く用いられました。
東日本橋二丁目16番街区(京葉道路と清杉通りが交差する角地)には、スクラッチタイルが多用された震災復興期のモダンな近代建築が立っています。昭和4年(1929年)に売薬卸問屋「玉置文治郎商店」として竣工した当該ビルは、医薬品を取り扱う性質上、正面入口が日の光の影響を受けにくい北向きにとられています。なお、建物の設計は辰野金吾に師事した建築家・森山松之助(1869年から1949年)が手掛け、建築工事は震災復興のために設立された復興建築助成株式会社が施工しました。
現存する図面によると、建物構造は鉄筋コンクリート造による地上4階・地下1階建てで、竣工時には地下に浴室・脱衣場・食事室・炊事室があり、1階は卸売部店舗・事務室・応接室、2階は子ども室・座敷、3階は番頭部屋としての店員室、4階は薬品類の陳列室が配置されていました。なお、戦災によって1階の木造部分は焼失しましたが、これ以外の延焼は免れており、おおむね創建時の状態を保ったまま現在に至っています。
特徴的なスクラッチタイルの正面外壁は、手作り風の不均一な縞模様と茶褐色で温かみのある自然な焼き色があり、建物に深い味わいを持たせています。また、中央上部の壁面には、華やかで洗練された花模様と丸いメダリオン(メダル型の装飾)が施されており、平面的なファサードに優雅な気品と立体感を持たせる意匠となっています。さらに、4階窓上部には特徴的な3連のアーチがあり、各階の窓の間にも幾何学模様をモチーフとした直線的なデザインのタイル装飾が施されています。こうしたデザインからは、当該ビルが昭和初期の近代建築に多くみられるアールデコ調の装飾を多分に用いて仕上げたことがわかります。特に、華麗で秀逸な外壁装飾は、薬学・薬品を取り扱う建物に対して、ある種の知性と品格を表わすようなデザインを施したとも受け取れるもので、設計者である森山松之助の建築・設計思想が見てとれる貴重な文化財となっています。
中央区教育委員会 学芸員
増山一成

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〒104-0041 新富一丁目13番14号

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ファクス:03-3551-2712

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