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「区のおしらせ ちゅうおう」 令和元年8月21日号

区内の文化財

日本橋野村ビルディング旧館

区指定有形文化財(建造物) 日本橋一丁目9番1号

写真:日本橋野村ビルディング旧館
▲日本橋野村ビルディング旧館

日本橋南東の橋詰広場(通称「滝の広場」)に隣接して立つ日本橋野村ビルディングは、日本橋川に沿って東西に広がる旧河岸地沿いの区画に建てられています。一見すると一棟のビルのようにも見える建物ですが、実際には関東大震災後の昭和5年(1930)に竣工した「旧館」、戦後の昭和34年(1959)に外観意匠を踏襲して増築された「本館」、そして昭和56年(1981)に増築された「新館」から構成されています。特に、日本橋に面した壁面上部に「野村證券」の文字を掲げた旧館は、竣工から約90年を経る中で用途変更や改修・改装(竣工当初は「野村銀行」、戦後のGHQ接収時は「RIVER VIEW HOTEL」、昭和28年以降は「野村證券本社」など)を重ねながらも、創建当初の意匠性や部材の一部を保全・継承してきた歴史的建造物(区指定有形文化財)です。
野村ビル旧館は、鉄骨鉄筋コンクリート構造による地上7階・地下2階建てで、建物西側正面の間口は約20メートル、奥行きは約50メートルと東西に長い建物となっています。建物の外観は、外壁仕上げの違いによって基壇部(きだんぶ)・中層部・上層部のクラシカルな3層構成である点に特徴があります。
1階の基壇部は、稲田花崗岩(昭和28年に長崎県五島産大春砂岩から改修)を張った仕上げで、角柱を立ち並べてコーニス(帯状の装飾)を回すなど重厚な印象を与えています。また、縦長の窓が上下に連続する中層部の2階から6階は濃褐色の平滑なタイル張りとなっており、6階の上部と下部には蛇腹状のテラコッタ装飾を施すなど、華美な装飾を省きながら均衡と軽快なリズム感が創出されています。さらに、ややセットバックした上層部の7階は、白モルタル仕上げの壁と曲面の隅角部(ぐうかくぶ)や格子窓が軽やかで優しい造形を生み出しており、西側にある勾配の緩い銅板葺きの屋根や相輪(そうりん)を思わせる頂部の鉄塔と相まって東洋風の個性的なデザインとなっています。
なお、当該ビルは、独自の建築様式を追い求め、近代における新しい建築のあり方を示した建築家・安井武雄(1884から1955)の東京における代表作でもあります。建築作品としての完成度が高い建物であるとともに、日本橋橋詰に現存する希少な近代建築の一つとして当該地区の景観形成にも大きく寄与している貴重な文化財です。

中央区総括文化財調査指導員
増山一成

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