掲載日:2023年1月18日

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第3章 現況と課題

1 一人一人の生き方が大切にされた安心できるまちを目指して

1の1 すべての人々が健康で安心して暮らせるまち

生涯を安心して暮らしていくためには、一人一人が健康の大切さを自覚し、心身の健康を保持していく必要があります。このため、単なる平均寿命の延伸だけではなく、「健康寿命の延伸」を目指すとともに、病気や障害があっても自分の価値観に基づいて、満足感が得られるように「主観的健康観の向上」に向けて健康づくりに取り組んでいくことが大切です。
本区では、30歳代、40歳代を中心とした子育て世帯が増加しています。このため、妊娠・出産・育児に関わる母子の健康支援対策にきめ細かく取り組むことにより、保護者の不安が軽減され、安心して子育てができる環境の充実が求められています。
また、全国的な傾向と同様、本区においても主要な死亡原因では、がん、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病が上位を占めています。このため、子どもの頃から正しい生活習慣を身に付け、高齢になっても健康でいられるよう、生涯を通じた健康づくりが重要となっているとともに、食育の推進などを通じて、栄養バランスの偏り、不規則な食生活の改善等、生活習慣病の予防につながる取組が必要です。
加えて、心の病気の予防法の普及・啓発や身近な人の心の危機に気づくための環境づくりが求められています。
また、本区は、銀座、日本橋、築地など、国内外から多くの観光客が訪れる日本を代表するにぎわいのまちであり、食文化の拠点でもあります。こうした区の特性を踏まえて生活衛生の向上や感染症対策に取り組み、医療機関との連携を強化し、区民の健康被害の発生予防や拡大防止を図る必要があります。
さらに、区民の命と健康を守るためには、必要な医療を、誰もが、いつでも、どこでも、適切に受けることができる体制が不可欠です。このため、かかりつけの医師、歯科医師、薬剤師の普及・定着、在宅医療や緊急時の対応など、医療機関相互の連携のもと、区民が必要とする医療サービスが切れ目なく提供できる医療環境の整備に向けた一層の取組が求められています。

1の2 誰もがいきいきと笑顔で暮らせるまち

本区では、子育て世帯が増加しており、乳幼児人口も平成30(2018)年には1万人を超えると推計されています。加えて、保育ニーズの高まりや子ども・子育て支援に関するニーズの多様化が見られます。このため、それぞれの家庭や子どもの状況に応じた支援策を受けられるように、保育や子育て環境の整備をはじめとしたさまざまな課題に適時・適切に対応していくことが求められています。
また、人口の増加に伴い、障害者福祉サービスの受給対象者は増加傾向にあります。このため、今まで以上に、障害特性を踏まえ、一人一人のニーズに応じたライフステージを通じた支援が可能となるよう、基盤整備と支援体制の充実に取り組む必要があります。
さらに、本区の平成29(2017)年1月1日の高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)は15.8%で、国の率より10ポイント以上低いものの、高齢者人口は年々増加し、これに伴い、要支援・要介護認定者数も増加しています。高齢者が住み慣れた地域において、元気で心豊かな生活を継続できる社会を実現するためには、早期に健康づくりに参加できる機会の提供や身近なところで継続して健康づくりに取り組める環境を整備していく必要があります。加えて、介護・医療・住まい・生活支援・介護予防を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が急務となっています。
一方で、従来、公的な福祉サービスは、児童福祉、障害者福祉、高齢者福祉など分野ごとに発展し、質・量ともに充実が図られてきました。しかし、地域に暮らす人々の生活課題が多様化・複雑化する中、分野をまたがる複合的な課題や制度の谷間にある課題が生じてきており、従来の公的な福祉サービスを充実・整備するだけでは対応しきれない状況も見られます。このため、区は地域の総合的なコーディネーターとしての役割を担い、区民が受け手、担い手となった住民相互の助け合いの推進や、福祉関係事業者・団体等と連携した地域福祉の充実に取り組んでいく必要があります。

1の3 互いに尊重しあって心豊かに暮らせるまち

すべての区民が心豊かに暮らせる地域社会を実現するためには、一人一人が個人の尊厳を尊重し、年齢、性別、国籍、障害の有無などの多様性や、多様な価値観を認め合う「共生社会」の実現に向けた積極的な取組が求められています。
また、子育て世代や高齢者、障害者などが、安全・安心かつ快適に暮らしていくためには、ユニバーサルデザインに基づくまちづくりが必要です。道路や設備・施設のハード面のバリアフリー化と同時に、区民一人一人がさまざまな社会的障壁に苦しむ人々を思いやり、積極的な支援に自発的に取り組む「心のバリアフリー」の視点も欠かせません。
このような状況の中、平成28(2016)年4月に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、「障害者差別解消法」という。)」が施行され、今後、「共生社会」実現に向けた全国的な機運の一層の高まりが想定されます。
さらに、本区では、子育て世帯の増加が目覚ましく、共働き世帯も増えています。しかし、依然として性別による役割の固定化や偏重が家庭、地域、職場等で見受けられるなど、区民の意識改革や労働環境整備がいまだ十分とはいえない状況にあります。
こうしたことから、男女が、家事、育児、家族の介護等すべての家庭生活において責任を分かち合うとともに、仕事、地域活動等すべての社会活動において対等な立場で参画することが一層求められています。
一方、本区では、高齢者の増加に伴い、権利擁護を必要とする区民の増加が予想されます。このため、認知症高齢者や判断能力が十分ではない方の権利を守り、地域で安心して暮らしていけるよう、成年後見制度をはじめとした権利擁護の仕組みの充実と利用促進の取組が求められています。
また、人権や人命に関わる重大問題として、高齢者や障害者、子ども、配偶者等への虐待や暴力があります。このため、地域全体の虐待防止に関する意識を高め、早期発見・早期対応に努めるとともに、被害者一人一人に応じたきめ細かな支援が必要です。
加えて、近年の社会経済環境の変化に伴い、本区では生活保護受給者が増加しており、同時に稼働年齢層の方の割合が高くなる傾向があります。このため、従来の就労支援に加え、通常の支援では就労が困難な方に対しては多面的で柔軟な支援が必要です。同時に、生活保護に至る前の生活困窮者についても、個々の状況に応じた相談体制や支援策の充実が課題となっています。

2 快適で安全な生活を送るための都市環境が整備されたまちを目指して

2の1 災害・犯罪に強くいつまでも住み続けられるまち

我が国は、地理や気象などの自然的条件から、地震や台風、洪水、火山噴火などの自然災害が発生しやすい国土であり、本区の防災対策は、その地域特性から大地震はもとより、風水害や大規模事故等の災害に対処できる態勢を確保することが重要です。
とりわけ、今後30年以内にマグニチュード7程度の大地震の発生する確率が70%と予測される首都直下地震への対応では、建物の耐震化推進等のほか、在宅避難への備えや防災拠点の円滑な運営体制の整備など、減災に向けた取組を強化・推進する必要があります。そのため、東日本大震災や熊本地震などの教訓を踏まえ、区民や事業所をはじめ地域との連携強化を推進し、「自助」「共助」の一層の強化を図るとともに、「公助」と一体となった総合的な防災力の向上に取り組み、「災害に強いまち中央区」を実現することが求められています。
また、本区は事業所数約3万8千、従業者数約75万人が就業しており、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に国内外から多くの来街者が見込まれ、災害時には30万人を超える帰宅困難者が想定されています。そのため、区民の安全確保を最優先することを主眼としつつ、観光客や輻そうする公共交通機関から生じる通過人口等にも配慮した帰宅困難者対策が課題となっています。
さらに、近年の異常な気象状況等により、全国各地で甚大な水害が発生しており、本区においても荒川水系の大規模氾濫による浸水等が想定されていることから、水害等における防災・減災に向けた対策の強化も課題となっています。
近年全国的に、凶悪事件や子ども・高齢者を狙った犯罪の報道が目立つ中、区内の刑法犯発生件数は、平成14(2002)年の5,381件をピークに13年連続で減少し、平成27(2015)年は2,615件と5割を下回っています。しかしながら、インターネット等を悪用した新たな手法による犯罪、悪質商法など、消費生活を巡るトラブルも発生しており、区民生活の安全を守るための防犯対策や消費者教育の推進が必要です。
また、区民がいつまでも安心して住み続けていくためには、高齢者人口の増加を見据えた住宅・住環境の整備のほか、マンションの維持管理や地域のコミュニティ形成など、ハード・ソフト両面からの取組が重要です。
さらに、我が国を取り巻く国際情勢が変化する中、都心に位置する本区においては、大規模テロなど、高まりつつある新たな脅威にも的確に対応することが必要です。

2の2 水とみどりあふれる豊かな環境を未来へつなぐまち

近年、世界人口の増加や新興国の経済活動による森林減少などにより地球温暖化、廃棄物問題、生物多様性の保全など、世界規模での環境問題が深刻化しています。これらの環境問題は地球上の生物にとっての生存基盤を揺るがす深刻な課題であり、地球環境を保全し、清らかな水と空気を次の世代に引き継ぐことは、私たちに課せられた大きな責務です。
日本の文化・商業・情報の中心として活発な経済活動が行われている本区は、環境に大きな負荷をかけています。そのため、省資源・省エネルギーなどの低炭素社会の実現に向けた取組をはじめ、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村に予定される最先端技術の導入など、新たな試みに積極的に挑戦し、環境負荷の少ない持続可能な社会をつくっていくことが必要です。
公園・緑地は、人々の憩いや安らぎの場、子どもたちの遊びの場、スポーツ・レクリエーションの場であるとともに、ヒートアイランド現象の緩和、災害時の避難場所などの防災機能も有するなど、健康で安全な生活を営む上で重要な機能を持っています。また、本区は河川や運河の面積が区全体の約18.3%を占めており、都内随一の水辺空間を誇っています。この豊かな水辺環境をいかし、人々が安全・安心・快適に散策できる水と緑のネットワークの充実を図るとともに、にぎわいの創出や魅力を高めることが求められています。
さらに、都心機能が集中し、緑が少ない本区では、区民・事業者と区との緑のパートナーシップにより、緑の豊かさを実感できるよう緑化の促進を図り、自然と調和した安らぎを感じることのできる都心居住環境の実現と、それを未来に引き継ぐまちづくりが重要です。

2の3 魅力ある都市機能と地域の文化を世界に発信するまち

江戸幕府の開府後、慶長9(1604)年に日本橋を起点とする五街道制が敷かれ、これをきっかけに日本橋・京橋一帯は交通、通信、経済、文化、商業の中心として発展を遂げました。このように、道路や公共交通などの都市基盤は生活の充実や経済・社会活動の発展において、重要な役割を果たしています。
都心に位置する本区は、23区の中でも特に道路整備が進んでいます。また、これまでJRや地下鉄、都営バスおよびコミュニティバスの運行など、公共交通の利便性の向上を図ってきました。一方、今後も臨海部を中心に人口の増加が予測され、増加する交通需要への対応が課題となっており、BRTの導入や臨海部の地下鉄新線の整備などの検討が進んでいます。さらに、商業・観光の観点からも、区内の回遊性を高める交通網の整備や誰もが利用しやすいバリアフリーの対応も重要です。さまざまな先進技術を推進し、すべての人が安全・安心かつ快適に利用できる強靭な都市機能の整備が求められています。
また、本区はその成り立ちや地域の営みを通じて育まれてきた個性豊かなまちが数多く存在しています。それは単に伝統を守るだけではなく、各時代における先進技術をまちづくりに取り入れながら昇華させた地域文化として根づき、首都東京、ひいては日本を牽引してきた歴史があります。名橋日本橋に象徴される江戸五街道の起点を有する「日本橋」、東京の表玄関である「八重洲」、日本一のショッピングストリート「銀座」、日本のウォール街「兜町」、食文化の拠点「築地」などがその例です。これらの地域ではまちづくりビジョン等の策定や地元主体のデザイン協議会による景観協議が行われ、まち全体で調和のとれた魅力的なまちづくりが進められています。一方、人口増加や社会状況の変化により、将来の人口動向を見据えた公共施設や医療施設、多様な商業施設の整備、観光客の急増に対する受入環境の充実など、新たな課題が生じています。首都東京の中心に位置する本区は、人口減少・超高齢社会を迎えた我が国の持続的な成長に資するまちづくりにとどまらず、創意工夫により新たな課題を克服し世界をリードする都市として地域文化を受け継ぎながら、区民一人一人が豊かに暮らせるまちづくりが求められています。

3 輝く個性とにぎわいが躍動を生み出すまちを目指して

3の1 多彩な産業が地域に活力を与え、多様な人が集いにぎわうまち

本区は、江戸開府以来商いのまちとして、多くの来街者を呼び込む飲食・小売業のほか、繊維・衣類の卸売業、地場産業である印刷・製本業、広告・デザイン、ファッション、情報サービス業などの創造的産業、経済機能の中枢である金融・証券業など多彩な産業が集積し、事業所数、従業者数のいずれにおいても23区の中でトップクラスを誇ります。面積としては約10平方キロメートルと決して大きくはない区の中で旺盛な事業活動が日々展開されており、地域経済の発展のみならず、日本を代表する商工業の中心地として、国全体の経済を牽引する役割も担っています。
一方、近年の東京への人口集中、外国人観光客の飛躍的な増加や情報通信技術のさらなる進展、流通形態や消費者ニーズの多様化など、区の産業を取り巻く環境も急激に変化しています。こうした中、地域に根付いた商店街や地場産業の活性化を図りながら、区産業の核を成す中小企業の基盤強化、創業の積極的支援、観光関連事業の展開など、各種施策を多面的に推進することで、地域経済のさらなる活性化や新たなにぎわいの呼び起こしを図っていく必要があります。
また、働いている方への視点も大切です。本区では、従業者数100人未満の中小事業所が全体の96%を占めています。こうした事業者については、労働環境や福利厚生などの面では大企業と比べて厳しい状況にあることから、雇用の確保、勤労者の生活の安定に向けた取組を進めるとともに、勤労者の能力開発や余暇活動などへの支援も推進していく必要があります。

3の2 豊かな学びにあふれ健やかな体を育むまち

グローバル化の進展や地球環境問題の顕在化など教育を取り巻く環境が変化する中、学校教育においては、子どもたちが自己の未来を見据え、現実に正対しながら自己の能力を最大限に発揮できる「生きる力」を育むことが求められています。そのためには「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の知・徳・体のバランスのとれた教育の推進が重要であり、とりわけ、予想を超える困難に直面しても子どもたちが主体性を発揮し、協働しながら将来を創造できるよう、より質の高い教育を展開していかなければなりません。
良好な学習環境を確保していくことも重要な課題です。年間出生数が2,000人を超える状況や、晴海地区における東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会後の急速な人口増を見据え、学校施設の計画的な増改築や新たな整備が必要となります。
家庭教育は、すべての教育の出発点であり、基本的な生活習慣、他人への思いやり、社会的なルール、自己肯定感や自立心など、子どもの基礎的な資質や能力を育成する上で非常に重要な役割を担っています。しかし、現在、核家族化やライフスタイルの変化等に伴い子どもを取り巻く家庭環境は大きく変化しています。こうした中、子どもを育てる「親力」を高める支援とともに、保護者が子育てに不安を抱え、孤立することのないよう、地域全体で家庭教育を支援していくことが大切です。
また、こうした社会環境の変化は、子どもの成長・発達に必要な他者や地域との関係性の希薄化や経験、体験の不足をもたらしており、文化やレクリエーションなどのさまざまな地域活動を促進し、体験活動への参加機会を増やすことが重要です。
生涯学習については、自己実現や生きがいづくりに加え、一人一人が豊かな人生を送るため、あらゆる機会にあらゆる場所で学習することができ、その成果をボランティアなどの地域活動にいかすことができる環境づくりが求められています。
さらに、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて気運が高まっているスポーツにおいても、いきいきとした暮らしの基盤となる健やかな体を育むとともに、世代を超えた触れ合いのきっかけになるものであることを踏まえ、誰もがスポーツに親しめる機会を積極的に創出していく必要があります。

3の3 人々のつながりが広がる文化の香りと平和に包まれたまち

本区では、下町ならではの人情や連帯感により温かな地域コミュニティが形成されてきました。また、歴史と伝統の積み重ねとさまざまな人々の活発な交流が地域に根ざした文化を育み、時に時代の最先端を行く文化を生み出してきました。
近年の若い世代における共働き世帯の増加、就業形態や価値観の多様化などから、地域活動への関わり方や担い手不足など新たな課題も生じていますが、安全・安心で豊かな生活を営むためにも、まちの課題を自ら解決することができる地域の力は重要です。
新たな人と人とのつながりが生み出す地域の力を、これからの本区の発展へと導く原動力にして、新しく住まわれた人も本区に愛着を持ち、育まれてきた文化を大切にしつつ、多様な主体との協働により地域とともに歩む都心コミュニティを構築していかなければなりません。
また、これからの国際化の進展を踏まえ、言葉や習慣の違いを超えて人々が互いに尊重し合いながら交流する開かれた地域社会を目指していくことも重要です。
文化を享受し、安心して日々の生活を送る上で基礎となっているのは「平和」です。戦争の惨禍を再び繰り返さないためにも、次の時代に戦争の悲惨さや平和の尊さを語り継ぐことは大変重要なことです。これからも区のあらゆる施策を通して平和の理念を反映させていく必要があります。

第4章 基本計画に盛り込むべき施策の方向

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