於岩稲荷田宮神社の鳥居(おいわいなりたみやじんじゃのとりい)

掲載日:2023年7月19日

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於岩稲荷田宮神社の鳥居の画像
於岩稲荷田宮神社の鳥居

種別

区民有形民俗文化財

所在地

新川二丁目25番11号 於岩稲荷田宮神社

員数

1基

年代

明治30年

登録年月日

平成10年4月1日

登録基準

  • 〔1〕ホ、信仰に用いられるもの(祭祀具、法会具、奉納物、偶像類、呪術用具、社祠等)
  • 〔2〕ロ、時代的特色を示すもの

広報紙コラム「区内の文化財」より(平成28年1月21日号掲載)

松の内(期間は場所によって正月3日〈三箇日〉、7日、15日などがある)が過ぎた1月下旬にもなると、家々の門口から歳徳神の依代(神霊が依りつく目標物)とされる松飾りが取り除かれています。そして、鎮守社や氏神、あるいは恵方の神社や著名な社寺へと参拝する人びとのにぎわいも落ち着いてきたところでしょうか。
正月の期間を通じて行われる新年初めての初詣では、各人思い思いの場所や日時にお参りする姿が見受けられます。神社では、玉垣で取り囲まれた神聖な区域から、改まった気持ちで境内入口の門である鳥居をくぐり、参道を進んで拝殿において参拝します。神社によって社殿の形式が異なる点(大きくは屋根形式)に気づくことは多いのですが、神域の内と外を分ける境界に立てられた「鳥居」も多種多様な形態があるのです。
一般的な鳥居の形式は、左右2本の柱と横木(笠木〈上端に渡した部材〉・島木〈笠木の下に渡した部材〉・貫〈柱を貫いて相互に横につないだ部材〉)で構成されています。特に、社殿が直線の部材構成である神明造の場合に常用される「神明鳥居」(鳥居上部の横木が直線)、社殿が軒反りを持つ流造や春日造の場合に広く用いられる「明神鳥居」(反りのある笠木・島木が特徴)を基本パターンとして多くの形態が存在し、材質もまた木造・石造・青銅と実にさまざまです。
なお、鳥居の語源に定説はありませんが、「鳥の居るところ」「神に供えた鶏のとまり木」「神社に通り居る門」などの諸説が伝わっています。
今回の文化財は、新川二丁目に鎮座する於岩稲荷田宮神社の境内にある明治期の石造鳥居です。本殿正面に向かって右側に立つこの鳥居は、高さ約2m50cm・幅約3m15cm・柱直径約20cmのやや小さい神明鳥居になります。形状は、両端が垂直である円柱状の笠木、柱から出ない角柱状の貫、下部には柱を巻くように根巻(藁座)と土台として据えた台石などがみられます。
江戸時代の当神社は、四谷左門町(現在の新宿区左門町)の先手鉄砲組同心・田宮家の屋敷神として祀られていましたが、明治12年(1879)の火災で焼失したことを契機に京橋区越前堀一丁目(現在地)へと遷座しました(戦後〈昭和27年〉、四谷の旧地にも再建)。同神社には豊受比売大神と田宮於岩命(田宮又左衛門の娘・お岩)の祭神が祀られており、特に婿養子の伊右衛門とともに家勢を再興したお岩の徳を称えた稲荷社として古くから信仰を集めてきました。
明治33年(1900)発行の『新撰東京名所図会』をみると、「境内凡五百坪、周囲に石塀を築き、石造の門柱鉄扉を施せり。門内両基の唐銅製の献燈を置き、素木の鳥居あり、社殿南に面し、田宮氏祖稲荷大神の扁額あり。別に額堂二棟、末社に白狐社、豊元社。大祭は三月二の午日にして、毎月二十二日、二十八日例祭を営む、俳優、芸妓の参詣夥多敷門前に講中の待合茶屋二軒あり。」と記されています。こうした記述からも、明治・大正期には「東海道四谷怪談」(歌舞伎狂言)の人気と相まって当社への信仰も盛んであったことがうかがえます。
なお、文化財の石造鳥居は、境内末社「白狐社」(現在は北東角の「狐塚」に鎮座)の参道前に建立されたもので、現在も良好な状態で創建以来の位置に遺存しています。柱背面には建立年を示す「奉納 明治三十年正月吉日」や寄進者と思われる「田岡栄建之」の陰刻も確認できます。
当神社の社殿は、大正期の関東大震災や昭和期の空襲で焼失・再建を繰り返しましたが、奇跡的に焼損を免れたこの鳥居は明治期から続く人々の信仰を今に伝える貴重な文化財となっています。
中央区総括文化財調査指導員
増山一成

お問い合わせ先

教育委員会事務局図書文化財課郷土資料館

〒104-0041 新富一丁目13番14号

電話:03-3551-2167

ファクス:03-3551-2712

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