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区のおしらせ 中央
平成28年3月21日号

区内の文化財

うぶけや鍛造打刃物類

区民有形民俗文化財 日本橋人形町三丁目9番2号 うぶけや
写真:うぶけや鍛造打刃物類
▲うぶけや鍛造打刃物類

人形町通りの一角に町家の構えが特徴的な打刃物店があります。建物は3階建て入母屋造りの木造建築で、間口二間ほどの店舗正面には「うぶけや」の屋号が揮毫された看板が掲げられています。昭和初期に建てられた建物や数寄屋風の店舗(昭和50年代に改装)からは、かつて当地周辺が花柳界や料亭街としてにぎわった頃の風情が伝わってくるようです。
各種打刃物の製造販売を専業とする「うぶけや」の創業は、幕末に大坂の新町橋(現在の大阪市西区新町)付近で開業していた刃物屋にさかのぼります。幕末維新期には日本橋の長谷川町(現在の日本橋堀留町二丁目)に江戸店を構え、明治初期からは南側の新泉町(現在地)へと移転して現在に至っています。
打刃物とは日本刀などの製造技法を受け継ぐ伝統的な鍛造法で造られた刃物のことを称します。軟鉄と硬鋼などの異なる素材を複合させた日本の打刃物は、主に鍛接・鍛造・荒仕上げ・焼純・焼入・焼戻などの技法によって、折れず、曲がらず、よく切れる刃物が出来上がります。なお、「うぶけや」では製造所から届いた打刃物類を精密な技巧で研ぎ、実用品としての仕上げや微調整を行う職商人(職人兼商人)として代々営んできました。
現在、うぶけやの店舗には合計48点の打刃物類(明治中期から昭和初期に製造販売した商品〈洋鋏14本・和鋏6本・花卉剪定鋏10本・小刀3本・毛抜き7本・剃刀3本・火熨斗2本・焼き鏝3挺〉)が展示されています。本来、実用品である打刃物類は使用されて価値を有するものですが、同店では関東大震災や空襲被害を免れてきた各時代の貴重な作品を大切に保管しています。
このうち、明治中期に造られた「うぶけや兼忠」と銘切り(「兼忠」は初代・喜之助が使用して以来の銘)のある和鋏(握り鋏)や日本製裁ち鋏を製造したことで知られる刀匠「吉田弥吉」の極印がある41cmもの大型洋鋏(ラシャ切り鋏)など鍛造職人がわかる刃物もあります。また、昭和初期の帽子製造職人が使用した洋鋏(ラシャ切り鋏)や弓矢に付ける矢羽根を切る和鋏(矢羽根切り鋏)などの珍しい商品もみられます。製造年代の異なる多種多様なうぶけやの鍛造打刃物類は、工芸技術史においても極めて重要な資料といえます。

中央区総括文化財調査指導員
増山一成

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