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区のおしらせ 中央
平成26年3月21日号

区内文化財

紙本墨画淡彩瀑布図

区民有形文化財 絵画 築地三丁目17番10号 法重寺

紙本墨画淡彩瀑布図

    紙本墨画淡彩瀑布図

文化4年(1807)に橘町二丁目(現在の東日本橋三丁目)で生まれた柴田是真(1807から1891)は、幕末から明治期に活躍した日本画家・漆芸家として知られています。是真のマルチな技巧家としての才能は、生粋の江戸職人の家系に生まれた天賦の才に加え、修業によって培われた技術と常に探求心を持って制作に取り組んできた姿勢にありました。
是真の生い立ちや画業、職人気質の人柄などは『こしかたの記』(日本画家・鏑木清方の著書)や『本朝画人伝』(小説家・村松梢風の著書)などに詳しく記述されています。
宮大工(彫工)の家に生まれた是真(名は亀太郎、後に順蔵)は、11歳で蒔絵師・古満寛哉(1767から1835)の弟子となり、16歳から円山四条派の画家・鈴木南嶺に師事して絵画を学び、24歳からは南嶺のすすめで四条派の画家・岡本豊彦の教えを受けに京都へ遊学しました。蒔絵や日本画の技法を吸収した是真は、その後、漆工芸や絵画において独創的な作品を数多く生み出しました。
さて、今回の文化財は、築地三丁目の浄土真宗本願寺派寺院・法重寺に什宝として伝わる是真の作品です。掛幅装の本図は、本紙に一枚漉きの大きな和紙(縦204.5センチメートル・横113.8センチメートル)を用い、急峻な懸崖から落下する瀑布(滝)の景観を見事に描き出しています。瀑布をモチーフとした是真の作品には、屏風・掛軸・漆絵など大小さまざまなものが現存しています。なかでも、法重寺の瀑布図は、ひときわ大きな作品であるため、是真が渾身の力を振るって制作したことは想像に難くありません。
懸崖から滝壺へと垂直に流れ落ちるダイナミックな動きや滝の音が聞こえるような臨場感あふれる鮮やかな水の勢いなど、是真の豊かな表現力に圧倒されることでしょう。墨の濃淡で表現された滝や水煙に包まれた写実的な情景からは、大自然と一体化しているような爽快感と清涼な空気が漂ってきそうです。
なお、本図の特徴である写実性と伝統的な装飾性、墨の濃淡表現にみられる付立法(輪郭線を描かずに物の形を墨の濃淡やぼかしで表現する技法)などには、四条派の画家としての一面もうかがえます。
大瀑布の雄大な景観を描いた本図は、区内に残る数少ない是真の名作といえます。

中央区主任文化財調査指導員 増山一成

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