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| 戦時下の市民の生活 |
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赤ちゃんと防空壕 ぼーん、ぼーん。 お母さん『昭和十九年、わたしたちの住んでいる月島のあたりにも、たびたび空襲があるようになりました。戦争がきびしくなるにつれ食料も手に入らなくなってきました』 ぐううう。 お母さん『さ、お母さんの分もお食べ』 はじめくんはうれしそうに手を出します。 お父さん『いかん。はじめは我慢しない。母さんは、お腹にあかちゃんがいるんだぞ』 はじめくんはしょんぼりです。 朝、すずめがちゅんちゅんないています。 お父さん『消火―っ!』 お父さんがかけごえをかけると、バケツリレーがはじまります。 お母さん「夫は、地域の警防団に入っていました。空襲で街が燃えたときすぐ火を消すための訓練が、日々、行われていました」 防火用水に火はたきを突っ込んで、たき火を消す練習をしています。 お母さん「火事になったときは逃げてはいけない、爆弾の火もはたきで消す。そんな無茶な練習を、何度も何度も繰り返していました」 男の人たちが穴を掘っている横で、お母さんたちが重い土を運んでいます。 お母さん「空襲のときに隠れる『防空壕』は、ご近所の人たちが助け合ってあちこちに掘られていました」 お母さん『うっ……』 けれども、おなかの大きなお母さんには、たいへんな仕事なのでした。 昭和20年3月9日。 お父さん『じゃあ、行ってくるよ』 お母さん「この日、夫は仕事の都合で、月島のわが家から、隅田川を越えて深川のほうへ行きました」 ぼーん。 わたし「うっ! はじめ……はじめ!」 お母さんはとても苦しそうです。 お母さん『おとなりのね、山田さん、山田さんのおばちゃんを呼んできてくれるかい』 はじめくんはおとなりの家に走っていきました。 えーん、えーん。 山田さん『女の子だよ。はじめちゃんはおにいちゃんだねえ』 はじめくんに妹ができたのです。 夜になっても、お父さんは仕事から帰ってきません。 ウィーン、ウィーン! お母さん『はじめ! はじめ!』 ドン、ドン! 男の人の声『てっきらいしゅうー!』 たくさんの爆弾や焼夷弾が、どんどん町に落とされます。 お母さん『ああ……』 おとなりの山田さんが、お母さんの手をしっかりにぎってくれたのです。 お母さん『あなた……』 次の日の朝。 お母さん『あなた……!』 お父さんは傷だらけ、服はぜんしんぼろぼろで、びしょぬれです。 お父さん『深川は、何もかも燃えてしまったよ……川に飛び込んで、一晩中浮かんでいたんだ……』 けれども、お父さんはまだおそろしさに震えています。 お父さん『おい……おい! 産まれたのか!』 お父さんとお母さんは、はじめくんと赤ちゃんを抱きしめて、家族がふたたびそろったことのうれしさを、いつまでもかみしめているのでした。
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